2018年12月02日

細雪(ささめゆき)

11月は、全ての休日に用事が入ってしまいあっという間に12月に突入した。

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それでも、映画などを見る余裕はないのだけど読書は寝る前に結構時間がとれる。それで、青空文庫からキンドルに手軽に無料でダウンロードしたのが、この小説。



結構長い小説だ(上、中、下巻となっているのだけど、無料版は上巻だけで、中、下巻は他社の有料版をDLした)。

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作者の谷崎潤一郎は誰もが知っている小説家だけど、正直作品を読んだのはこれが初めてだった。戦前の小説というと、文章が難解というイメージがあったからで、実際読み始めてもなじめない表現や長い長いセンテンスに戸惑うことが多かった。文豪が書く文章には編集者もいろいろ指摘しにくかったのかなあ、などとも考えながら読み進めていったのだけど、いつのまにかどんどんはまり込んでいた。

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舞台は戦前の日本で、金銭的には恵まれた家庭に住む家族の物語。書かれた当時は現代小説だったのだろうけど、今となっては、戦前の白黒の映画を見て当時を偲ぶように、80年ほど前の過去の日本の世相がどのようなものだったかが、文章を読むといきいきと感じられた。

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本筋からは外れるのだけど、小説の中で語られた中でも印象深かったのは、戦前の人がいかに感染症に悩まされたかということだ。小説の世界だから誇張されているのだろうけど、覚えているだけでも、結核、肝炎、猩紅熱、赤痢、乳様突起炎、脱疽など、今となってはあまり聞かないような病気を含めて、戦前の人が療養や看護に悩まされた労苦が描かれている。また、それらの病気を検査診断する手段、機器なども前時代であり、医療の進歩がいかに人類に幸せをもたらしたかを思った。また交通や通信なども旧式であり、この小説に描かれた人々は金銭的には恵まれた人々なのだけど、現代ではその程度の暮らしはほとんどの人ができるのだろうし、医学的には、小説の中で出てきた病気にはなることはないだろうし、なったとしても軽い症状で済んだろう。

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肝心のストーリーだけど、一軒家に暮らす3姉妹のうち、良縁に恵まれない三女、粗放な生活を繰り広げる四女が繰り広げる人間模様が描かれている。よかったと感じたのは、何がよくて何が悪いのか、全ての人に平等にあてはまるような価値はなく、その生い立ちや生活の中で良いこと、悪いことが家庭を形作る人の中でおのずと形成されてきて、もしその平穏を波立てるようなことがあっても、時間の経過でなんとなくその波も収まってくるということが、長い小説のなかで表現されていたことだ。

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もうひとつ、戦前、結婚には仲人の紹介が当たり前で、相手の家庭を調査し、何か問題があれば破たんしてしまうこともあったようだ。そんな時代だから、いわれのない理由で幸せになれない人もいたのだろう。でも、仲人さんのお節介で幸せになれたカップルもいたのだろう。物質的に恵まれた現代で、コミュニケーションの手段もインターネットで革新されたのだけど、皆が幸せといえる時代なのかどうか、考えながら読了した。またこの作者の小説を読みたいと思った。
posted by ashuken at 22:40| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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